明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
彼と同じ考えに至ったというだけで、心が弾んでしまう。


「しかし、また来年咲くだろう」
「はい」


それからふたり並んで腰を下ろし、餌やりをした。

意外にも彼は楽しげで、終始表情が柔らかく、祝言の間見せていた凛々しい姿とは別人のようだ。

新たな彼の一面を発見したと、心の中で小躍りしていた。


初子さん、やはりこれは恋なのかしら? 
彼と一緒にいると、楽しくてたまらないの。


「行基さま、朝食の支度が整いました」
「今行く」


縁側から声をかけられ立ち上がった行基さんは、私にスッと手を差し出し立たせてくれる。

ごく自然にこうして女性を気遣えることに感心する。


「ありがとうございます」
「うん。一ノ瀬がそろそろ顔を出すだろう」
「もうお仕事ですか?」

「アイツは数件先に住んでいるんだが、ここの朝食がうまいといつも食いに来る。迷惑な男だ」


そんなことを言いながらも、彼は優しい笑みをこぼしている。
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