明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

幼なじみだと聞いたけど、幼き頃に弟を病で亡くしている行基さんにとって、私と初子さんのような気心の知れた関係なのかもしれない。


「行基さん、おはようございます」


噂をすれば……だ。一ノ瀬さんがやってきた。


「お前は、新婚の邪魔だとは思わないのか？」
「俺がそんなタマじゃないと知っているでしょう？」


一ノ瀬さんがそう言うと、ふんと鼻で笑う行基さんは、私の手を引き縁側に上がらせてくれる。


「あやさん、おはようございます」


それから一ノ瀬さんは私にも挨拶をしてくれた。


「おはようございます。改めて、よろしくお願いいたします」


丁寧に挨拶をしなくてもいいと言われたものの、やはりお礼とお願いはきちんとしたい。

人としての最低限のたしなみだと思うからだ。


「と、とんでもありません。こちらこそ」
「信明(のぶあき)もあやの前では小さくなるんだな」


行基さんはクスッと笑って、大広間へと足を進めた。


「まったく。ひと言多いですよ」