明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～
「これで明日までに練習しておきなさい」と別のネクタイを渡され、今日は自分で締めた彼は、玄関へと向かう。

そして待っていた一ノ瀬さんと合流した。


「いってらっしゃいませ」
「あぁ。いってくる」


玄関に正座をして見送ると、彼は私の目を見て微かに笑みを浮かべてくれた。


行基さんはことあるごとにいちいち視線を送ってくれる。

それが恥ずかしいものの、うれしくもある。きちんと私との会話を大切にしてくれている気がするからだ。


「さて、なにをしたらいいのかしら？」


とりあえずネクタイを結ぶ練習ね。

どうやら女中の手伝いはさせてもらえそうにない。
私は仕方なく部屋に戻って、ひたすらネクタイを結ぶ練習を始めた。



その日、行基さんが帰宅したのは二十時近くだった。

家から出ることなくひたすら練習をしていたからか、すっかりネクタイは結べるようになっている。


「おかえりなさいませ」
「ただいま」


彼が出迎えた私に鞄を差し出すので受け取った。
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