明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「お食事になさいますか?」
「その前に風呂に入りたい。忙しかったから汗をかいた」
「はい。すぐに準備を」


風呂の湯加減は女中に任せて、行基さんの浴衣を取りに部屋へと向かう。


「どれがいいのかしら……」


浴衣だけでもたくさんあって、迷ってしまう。


「あやの好きな物で構わないよ」


すると彼もやってきて、私のうしろに立った。


「はい」


『好きな物』と言われるとますます迷い、出したり入れたりを繰り返していると、行基さんがクスクス笑っている。


「あやを見ていると飽きないな」
「す、すみません」


早く決めないからだ。


「謝る必要はない。楽しいのだから」


楽しい、の? それならよかった。


「今日はこちらでよろしいですか?」
「あぁ、十分だ。あやはこの色が好きなのか?」


行基さんはくすんだ紫・古代紫色に縦縞の入った浴衣に視線を送り尋ねてくる。


「はい。渋みがあっていいお色ですよね」


ふとそう口にすると、彼は小さくうなずく。
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