明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「そうだな。俺もこれは好きだ。あやにもこの色の浴衣を作らせよう」

「い、いえっ。もうたくさん用意していただいているので……」


箪笥には着られないほどの着物や浴衣があふれかえっている。

そう答えると、行基さんはなぜか私の腰を抱き、そしてグイッと引き寄せる。

ど、どうしたの?


「あやと同じ物を身につけたいんだが、お前は嫌か?」


そして耳元で囁くように言うので、途端に体がカーッと熱くなる。


「と、ととととんでもございません」
「はは。どうして動揺している?」


想いを寄せる人からうれしい言葉をかけられたら、誰だってこうなってしまうのではないの? 私だけ?


「動揺なんて……」
「してるだろう? 耳が赤いぞ」


行基さんはそう口にしながら、その赤く染まる耳朶を唇で食むので、息が止まる。


「あや?」


体を硬直させていたからか、顔を覗き込まれて困ってしまう。

今は、見ないで。
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