明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「はははは。かわいいな。頬まで椿のように赤く染まってしまった」


彼は大きな笑い声を上げ、やっと離れてくれた。


「ゆ、浴衣は風呂までお持ちします」
「うん。ありがとう」


いつまでも肩を揺らしている行基さんにそう告げ、部屋を飛び出す。

すると彼もついてきたので鼓動が鎮まる気配もないが、顔を見られていないだけましだ。


「それではこちらに置きます」


風呂場に着き、浴衣を置いて出ていこうとすると、行基さんにふと腕をつかまれた。


「あやも一緒に入るか?」
「へっ!?」


驚きすぎて変な声が出る。


「ははっ、冗談だよ」


彼は私をからかうのがよほど楽しいのか、とんでもない発言を次々と発してくる。

そのたびに息が止まってしまう私のことなんてお構いなしだ。


「し、失礼します」


私はバタバタと脱衣所をあとにした。
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