明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「あや。今日一日、困ったことはなかった?」
「はい、まったく。あっ……暇すぎて困りました」


正直に答えると、行基さんは「暇すぎて困るとは……」と少し呆れている。


「なにかしたいことは?」
「そうですね。私も本が読みたいです。でも、行基さんのように難しい漢字を読めるわけではないので……」


初子さんが周防さんと話を膨らませていたように、私も行基さんとしてみたい。
だけど、仮名と簡単な漢字しかわからない。


「そうか。ならば辞典というものを買ってやろう。それで言葉を調べることができる」
「本当ですか! うれしいです」


私は喜びのあまり、ガバッと起き上がってしまった。


「そんなに喜ぶとは。とりあえず落ち着いて」
「すみません……」


淑女たるもの、冷静に行動しなければならないのに、なかなか難しい。

腕を引かれて再び寝そべると、彼は体を私のほうに向け、再び口を開く。


「他には?」
「そうですね……。もし許されるなら、舞踊が……踊りが習いたいです」
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