明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
たすき掛けをしていたからか、彼は驚いている。


「いえ、無理やりお願いしてやらせていただいているんです」
「え……。やりたくて、ですか?」


彼はまぶたをパチパチとして唖然としている。

もしかして、掃除も舞踊と同じくらいしてはいけないことなの?


「すみません。やはりしてはいけないんでしょうか」


思わず尋ねると、彼は「あははは」と笑いだした。


「違いますよ。普通はしたがらないんです。誰かにやってもらえるならそのほうが。だって、疲れるでしょう?」

「このくらいで疲れるんですか?」


一橋家の廊下を何往復したって疲れたりはしなかった。
このくらいどうということはない。


「頼もしい奥さまですね。俺はいいと思いますよ。ぐうたらしているよりずっと。多分、行基さんもそういうことを口にされる方です」


よかった。行基さんに許可を得たわけではなかったので、もし困るならやめなければと思っていた。
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