明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「それはそうと、少しお話が」
「はい。よろしければお茶でも」


私は女中の中では一番若い——といっても私よりふたつ年上の、とわにお茶を頼み客間に彼を通した。

向き合って座ると、彼はすぐに口を開く。


「今日は秘書として参りました」


一ノ瀬さんは仕事のときは顔つきが引き締まり、話し方が変わる。


「実は来週末に、津田家の本邸で大切なパーティがあって、あやさんに行基さんの妻として出席していただけないかと」
「私がパーティに?」

「はい。政府の関係者を招いた、まあ顔つなぎのようなもので、年に何度か催しているんです」


そういえば一橋の父もそうした催しに時々呼ばれていたような。
行ったことはないので、どんなものかはわからないけれど。


突然の申し出で、しばし考える。

作法の先生についてもらったとはいえ、短期間すぎて令嬢らしい振る舞いができているとは言い難い。

政府関係者まで来るということは、重要なパーティなのだろう。

大丈夫かな……。
< 122 / 332 >

この作品をシェア

pagetop