明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
彼への憧れの念を募らせ、結婚の話を受けたものの、本当によかったのかと今さらながらに腰が引ける。


「そんな心配はご無用ですよ。行基さんは成功を収めたからといって、横柄な態度を取る方ではありません。どんな人にでも同じように接してくださいますよ」


行基さんは初めて会ったとき、支えてくれる従業員に感謝し、足が地についた生き方をしたいと言っていた。

一ノ瀬さんが言うように、とても謙虚で優しい人なんだと思う。


「ただしあやさん。行基さんがいる世界は、きらびやかなだけではありません。どこにも嫌味な人間がいるもので、もしかしたら失礼な発言をされることもあるかと思いますが、耐えてくださいますか?」
「嫌味な……」


お義父さまは『成金』と罵られてきたと聞いたけれど、そういうことだろうか。


「はい。ですがあやさんは子爵一橋家のご令嬢です。堂々としていらしいください」


彼の言葉にうなずいた。
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