明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
まさに日本の産業の最先端の話をしていて、私がここにいていいのかとはばかられるくらいだった。


野村さまとの話が終わった行基さんは、私の手を取り一旦会場の外へと足を運ぶ。


「あや、着物の用意があるとは驚いたよ」

「はい。野村さまに関する資料を拝見しまして、すぐに呉服店に走りました。本当はもう少し高級品をと思いましたが、急でしたのであれで精いっぱいで……」

「走ったって、あやが?」


そうか。貞たちに頼むべきところだったのか。

だけど時間もなく、気がついたら家を飛び出していた。
しかも、呉服店に使いに行くくらいなんでもないし。


「……はい。申し訳ありません。余計なことをしたでしょうか」


よかれと思ってしたことだったし、野村さまは大喜びしてくれたので正解だったと思ったが、出過ぎた真似だったのかもしれない。


「いや。助かった。今後も津田紡績を最優先で考えてくださるそうだ」
「本当ですか!」


あぁ、よかった。
< 145 / 332 >

この作品をシェア

pagetop