明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

耐えてくださいと言われたが、自分のことだけでなく行基さんのことまで辱められて、気が収まらない。


「辻さま。是非踊ってくださいませ。ですがその前に。私は子爵一橋重蔵の娘でございます。父は宮内省におります」


辻さまの発言を遮りそう告げると、彼はハッとした表情を見せる。

没落しつつある家柄とはいえ、爵位を持っているかどうかというのは彼らにとって重要だという。

私は散財したあげく金の無心をする父より、大きな会社を動かし立派に部下を導いている行基さんのほうがよほど尊敬の対象だと思うんだけど。


「そう、でしたか……」


こんなことを自分からひけらかすのは好きではない。
まして妾の子なのだし。


それでも、今後津田家が侮蔑されなくてすむのなら、いくらでもその地位を使おう。
そもそもそのために嫁いできたのだから。


「ですが、主人が積み上げてきた努力には、どんな爵位を持っても太刀打ちなどできません。私は主人を心より尊敬しております」