明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
それは本音だ。


「さ、どうか踊ってください。不慣れですがご勘弁を」


私か笑顔を作ると行基さんが心配げな視線を私に向けている。

本当は行基さんの以外の男性に触れられるのも嫌だ。
だけど、少しだけ我慢。

辻さまはあとに引けなくなったようで、複雑な表情のまま私の手を取る。


そして曲がかかり始めると、私は足を動かした。

基本のステップしかできないけれど、きっとなんとかなる。

私は背筋を伸ばし笑顔を崩すことなく踊り続けた。


ダンスがあると聞き行基さんに指導を受けてから、暇さえあればその練習にいそしんできたのだ。

母のように日本舞踊を踊れるようになりたいと思っていたのに、まさか西洋のダンスを先に学ぶとは想定外だったが、行基さんの役に立ちたい一心で必死だった。

なんとか一曲踊り終えると、すぐに行基さんが私のところまでやってきて、即刻辻さまから引き離してくれた。
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