明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
どうしたんだろう。
彼の言葉が刺々しくて痛くてたまらない。


「いえ、あの……」
「副社長のことも子爵の称号をちらつかせて手に入れられたのでしょうけど、副社長の汚点にならないようにお気をつけください」
「……はい」


そうか。彼は行基さんのことを尊敬していて、彼を守りたい一心なんだ。

だから私では力不足だと言いたいのだろう。


だけど、努力してこなかったわけじゃない。

心の中で反論しつつ、津田紡績を引っ張る行基さんの苦労はそんなものじゃないはずだと思い、口を閉ざした。

おそらく藤原さんの言う通り、まだまだ努力が足りないんだと思ったからだ。

ダンスのステップも、もっと完璧にしておくべきだった。


「あや、お疲れさま」


それからすぐに、すべてのお客さまを送り出した行基さんが私に声をかけてくれた。

すると藤原さんはなんでもなかったように会釈して離れていく。


「お疲れさまでした。ダンスもうまく踊れず、申し訳ありません」
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