明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
謝ろうとすると、うっとりとしたような視線を送る彼が、人差し指で私の唇に触れる。

この色情を感じさせる雰囲気は、なに? 

たちまち息が苦しくなり、耳まで熱い。

行基さんはふとした瞬間に、こういう艶のある表情をするから困ってしまう。


「だから、謝るな。なにもおかしなことは言ってない」


彼は目を細めて笑う。


「そう、ですね……」
「それに俺は、その前向きなところがいいと言いたかったんだ」


あれ、褒められているの?

一橋家にいた頃はどれだけ仕事をこなしても叱られるばかりだったので、何度も褒められると、夢を見ているかのようだ。


「さて、昨日活躍してくれたお礼に、今日はふたりで出かけよう」
「えっ!」


日曜なので仕事は休みだと聞いていたけど、まさかふたりで出かけられるなんて。
小躍りしたい気分だ。


「その前に飯だ。膳の用意を頼む」
「かしこまりました!」
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