明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
彼は楽しげな様子で答え、近くにあった店の中に私を引っ張った。


「まずは履物を買おう」
「履物はたくさんいただきましたから、もういりません」


着物に合わせて十足は用意されていて、いつ履いたらいいのかわからないくらいだ。


「男女を問わず、買ってやると言えば普通は喜ぶものだぞ? 昔、ひとりだけ金はいらないと言った女はいたけどね」


彼の発言に鼓動が速まる。
もしかして、初子さんと入れ替わっていたときの私?


「あぁっ、それならお団子が食べたいです。あんが乗っているお団子」

「ははっ、食い気か。それもいい。それじゃあ甘味処に行こう。どこにあったか……」


行基さんは私の手を引き、歩き始める。


「あや、あそこでいい?」


行基さんは団子の絵の暖簾が下がる店を見つけ、にこやかに私に尋ねる。


「はい、もちろんです」


私も笑顔で返すと、彼は足を進めた。

たっぷりあんの乗った団子を頬張り、幸せを噛みしめる。
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