明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
思えば団子の取り合いで、実母の存在を知ってしまったけれど、今はこんなに充実している。


「おいしいです」
「それはよかった」


向かいの席に座り私と同じ団子を注文した彼は、三つあるうちのひとつを私の皿に乗せてくる。


「これは行基さんの分ですよ?」


「俺はいい。あやの笑顔を見ているだけで腹がいっぱいだ。なんならもうひとつ食べるか?」


行基さんは黒文字に刺したお団子を私の口の前に差しだしてきた。


「えっ?」
「口を開けて。食べさせてやる」


彼の発言を聞き、思考が停止する。


「たべ……食べさせて?」


動転して声が裏返ってしまったせいか、行基さんは白い歯を見せる。


「そうだよ。ほら」
「あっ、いえっ……。作法の先生が大きな口を開いてはいけないと……」


食べさせてもらうなんて恥ずかしいことはできないと、必死に頭を回転させて言い訳を考えた。


「さっきの団子はひと口だったなぁ」
「あ……」
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