明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
しまった。
好物を前にして、作法のことなんてすっかり頭から飛んでいたのを、しっかりと見られていたようだ。


「ほら、早くして」


急かされ思いきって口を開くと、団子を差し込まれた。

なんなの、これ。
恥ずかしさのあまり顔から火を噴きそうだ。


「ははは。俺とふたりだけのときはおいしく食べればいい。そうやって大きな口を開けたとしても、微笑ましいとしか思わんからね」


そう、なの?
返事がしたいのに、胸も口の中もいっぱいでできない。

目を伏せたままもぐもぐと咀嚼していると、彼はいつまでもクスクスと笑みを漏らしていた。

ゴクンと団子を飲み込むと、彼は目を大きくして私にお茶を差し出してくる。


「大丈夫か? あや、団子は飲むものではない」
「大丈夫、ですよ? ちゃんと噛みました」


たしかにいつもより早く飲み込んでしまったけれど、喉に詰まらせるような失態はさすがにしない。


「はー、驚いた」
「行基さんは心配しすぎです」
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