明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
彼の発言に救われた気がする。
やはり母のことを卑下したくなんてないからだ。

海老茶袴姿で初めて会ったあの日、とびきり優しそうな人だと思ったけれど、その直感は正しかった。どんどん心が奪われていくのを感じる。

彼の妻として隣にいられるのは本当に幸せだけど……愛して欲しいと叫んでしまいそうで怖い。

私たちは互いの家の利益のために、夫婦になっただけなのに。


そんなことを考えていると、突然目の前に鬼のような形相をした男が立ちふさがった。


「津田行基だな」
「そうだが。なんだ?」


行基さんは足を止め、私をスッと背中のうしろに隠してくれる。


「お前のせいでうちの会社はメチャクチャだ。どうしてくれよう!」
「あや、離れろ!」


行基さんが叫んだ瞬間、男が懐から小刀を取り出して振り上げる。


彼はそれを俊敏によけてみせたけれど、立ちすくむ私に気づき、「逃げろ!」と声を張り上げ体を押した。


そのとき、男に背中を見せてしまい、暴漢の小刀が行基さんの右腕を切り裂く。
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