明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「うわぁっ! クソッ」


一瞬苦し気な声を上げた行基さんだが、ひるむことなく男の足を引っかけて倒し背中に馬乗りになる。

そして、足で小刀を握っていた右手を蹴り上げ、離させた。


「だ、誰か助けて! 警察を!」


それを見た私が大声で叫ぶと、近くの商店から騒ぎを聞きつけた人が続々と出てきて、けがをした行基さんの代わりに男を押さえつけてくれた。


「嫌っ、行基さん!」
「あや、無事か?」
「血が……」
「大丈夫だ」


彼は私を安心させるためか、口角を上げてみせはするけれど、右手を押さえて倒れ込んでしまった。


「お医者さまを……。どなたか助けて!」


それからは必死だった。
着物の裾を割き、彼の腕を縛り上げる。


「行基さん。行基さん、しっかり!」


少しずつ血の気を失っていく行基さんを見て私まで倒れそうになったが、ぐっとこらえてひたすら声をかけ続けた。
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