明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
幸い医者がすぐに駆け付けてくれて、応急処置のあと津田家へと運んでくれた。


「出血が多すぎます。ですが、止血はしましたし、今できることはこれくらいしかありません。脈や呼吸は気をつけて見ていてください。なにかあればすぐに呼ぶように」


お医者さまは私に脈の測り方を教えて帰っていった。


「行基さん……」


いつもとは違う青白い唇。
つい先ほどまで私の手を引いていた大きな手は、力なく動くことすらない。


「逝かないでください。お願い……。行基さん!」


冷たく感じる彼の手を強く握りしめ、何度も何度も名前を呼び続ける。


「私に死ぬなとおっしゃったばかりでしょう?」


けれども、彼が反応することはない。
私は彼の枕元に座り、手を握り続けていた。


「脈を測らなくては」


それからしばらくして、時計の秒針が一周する間、行基さんの手首で脈の回数を測れと言われた私は、箪笥の奥にしまっておいたあの懐中時計を部屋から持ってきて、測定し始める。
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