明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「いえ。いたしません。行基さんは私が何者でも好いてくださるとおっしゃっています」


彼の目を見つめてきっぱりと反論すれば、眉間にしわが寄るのがわかる。


「華族さまは厚かましくて困る。社長の優しさに甘えるのはもうよしていただきたい」


厳しい口調で私を責める彼がスーッと息を吸い込んで再び口を開こうとしたそのとき。


「やはりお前だったか」


障子の向こうから、行基さんと一ノ瀬さんが現れた。


「社長……」
「あやには以前から、出生のあれこれを気にしなくていいと伝えてあった。それなのに、思いつめるほどに悩んでいるのを見て、誰かになじられたに違いないと思っていたよ」


藤原さんは顔を引きつらせて行基さんを見つめている。


「俺がいつ離縁したいと言った!」


行基さんの鬼の形相なんて初めて見た。
その様子に気圧され体を小さくしていると、一ノ瀬さんが隣に来て座る。


「行基さんにお任せを」


そして小声でそう伝えてくれた。
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