明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「も、申し訳ありません」


藤原さんは畳に額をするように土下座しているが、行基さんは怒りの表情を崩さない。


「謝罪をしたくらいで許されると思っているのか? もう少し時代が早ければ、腹を切れと言い渡すところだ」


そんな……。


「行基さん、私は大丈夫ですから。藤原さんを許してあげてください」


『お任せを』と言われたものの、耐えきれなくなり思わず口を挟んでしまった。

すると、顔を上げた藤原さんが私を見て唖然としている。


「藤原。あやは自分を苦しめた者までかばうような優しい女だ。お前が知っている華族はひどい人間でも、すべてがそうではない。くだらない偏見は捨てろ」


藤原さんは華族の誰かとなにかあったのだろうか? 
だから華族と聞けば、憎くてたまらないとか?


「は、はい」


藤原さんの目が潤んできて、驚いてしまう。


「お前の顔など見たくない。しばらく謹慎しろ! 一ノ瀬、連れていけ」
「かしこまりました。行くぞ、藤原」
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