明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

一ノ瀬さんが今にも泣きだしそうな藤原さんを連れて部屋を出ていった。


「あや。つらかっただろう？」


行基さんはうまくことが呑み込めずパチパチと瞬きを繰り返す私の前に座り、手を握ってくる。


「大丈夫です。どうして藤原さんのことがおわかりに？」

「あいつには好きな女がいてね。俺にも紹介してくれて、いつか結婚するんだと言っていた。だけど、とある官僚の娘だった彼女を華族の男が見初め、無理やり孕まされてしまったんだ」


「そんな……」


そんなひどいことがあったなんて。


「彼女は悩んだ末、子のために資産が十分にあるその男に嫁ぐ選択をしたんだが、嫁いですぐ、子を産む前に病気で亡くなってしまった」
「亡くなった……」


悲しすぎる話を聞き思わず胸を手で押さえると、彼が抱き寄せてくれる。


「それを知った藤原は、激しい怒りを夫に向け殺さんばかりの勢いだったから、止めた。彼女を手籠めにしたことは許されることではないが、亡くなったのは病気が原因で、夫のせいではなかったし」