明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
藤原さんを立ち直らせたいのだろう。


「藤原さん、おつらかったでしょうね。いえ、そんな言葉では表せないですよね」


初子さんを失ったときのような虚しさが私を襲う。


「お前は傷つけられたんだ。もっと怒ってもいいんだよ」

「怒ったりできません。それに、こうして行基さんが駆けつけてくださっただけで、私は幸せです」


苦しそうな彼を元気づけたくて、口元を緩めてみせる。


「あや、ありがとう」
「それより、行基さん、お仕事大丈夫ですか?」
「あっ、まずい」


出ていく行基さんを見送るために玄関まで行くと、彼は振り返る。


「藤原にはきちんと話をして必ず立ち直らせる」
「藤原さんは行基さんを本当に尊敬していらっしゃいます。だから今回も、行基さんを守らなければと思ったんだと」


そう伝えると、彼は困った顔をしながらうなずいている。


「行基さんの愛のこもった叱責をご理解されたと思いますよ、きっと。どうか、これ以上はお責めにならないでください」
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