明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
謝ると彼は笑っている。


「まあいい。それでせんべいの話はどうした?」

「はい。餅屋の前を通りかかったら丁度焼いていて、あまりにじっと見すぎたのか、『焼いてみる?』って」


そう言うと彼はついに噴き出した。


「あやが目を輝かせて、せんべいを見ている様子が目に浮かぶ」
「そうですか?」

「あぁ。お前は好奇心というものが尽きることはなさそうだからね。よいことだ」


高揚した気持ちそのままに、ありのままあったことを話してしまい、『上品にしなさい』と叱られるのかと思ったけれど、『よいこと』と言ってもらえているのだから、問題はないのかしら?


「はい。でも欲張りすぎてしまいました」


私が背中に隠し持っていた顔の大きさほどのせんべいを見せると、彼は高らかに笑う。


「こんなに大きなせんべいは初めてだ。お前らしすぎる。それを食す前に、着替えよう」
「はい」
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