明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
浴衣を用意しようと彼の部屋についていくと、ギューッと強く抱きしめられて驚いてしまう。


「元気が戻ったな」
「えっ……。すみませんでした」


ずっと心配をかけていたんだと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「どうやら俺は、お前の笑顔を見ないと一日がつまらなくなるらしい」
「そ、そんな……」
「あや」


彼は耳元で艶を纏ったような声を吐き出す。


「……はい」
「お前をたっぷり甘やかしたい。飯が済んだら、一緒に風呂に入ろう」


お風呂に? それは恥ずかしすぎる。

激しく首を振って『できません』と主張したけれど、「たまにはそういうのもいいだろ?」と欲情たっぷりの声で囁かれ、さらには耳朶を甘噛みされ、うなずくしかなくなってしまった。


貞たちに食事の膳を運んでもらっている間に、彼はせんべいを食べてくれた。


「大きすぎるから割って食べさせて」
「た、食べさせ?」


もう自由に手を動かせるのに。
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