明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
母に嫌われているとわかったからには、初子さんや孝義と同じように一橋家の子の顔はしていられない。


「なに言ってるの? あや、お母さまには私がお話して、今まで通りにしていただくわ。だから——」


初子さんは私の肩をつかみ必死に訴えてくる。

彼女の申し出がうれしくてたまらない。
だけど、このまま違和感を抱えながら生きていくのもつらい。

母に手をあげられるというのは、『あなたに注ぐ愛などない』と言われているかのようで、ことのほか堪えるのだ。


「初子さん、ありがとう。でも私、そもそも生きている場所が違っていたのかもしれないわ。それより、芸妓ってなにかしら?」


なぜこれほどまでに冷静でいられたのか、自分でもわからない。

もしかしたら、母の子ではないかもしれないという疑いを、知らず知らずのうちに心の中に抱いていたのかも。

今はただ、自分は何者なのかを知りたい。
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