明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
妾という意味はなんとなく知っているが、芸妓については知らなかった。

尋ねてみたものの、初子さんにもわからないらしく答えは返ってこない。


「あやさま。あやさまのお母さまは、それはそれは舞踊がお上手な方でいらっしゃったんです」


代わりにまつが答えてくれた。


「舞踊が……。それは素晴らしい」


舞踊ということは、母も上流階級の人だったのかしら。

父くらいの歳の人たちには妾がいるのは珍しくないと聞いたことがある。

父は母の美しい舞に魅せられたのかも……。

まつの話を聞いた私は、ぼんやりとそんなことを考えていた。



翌朝は早起きをして、朝食づくりをしている女中のところに行き、とりあえずは仕事を観察していた。


「あやさま、よろしいんですよ。学校に行く準備をなさってください」


まつに促されたが、娘として愛してもらえないならば、女中としてでもいい。
十分な働きをして認められたいと決意していた。

母に褒められたい。初子さんのように。
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