明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「お茶を飲むか?」
「はい」


喉がカラカラだ。

女中が持ってきてくれたお茶を飲むために起き上がろうとすると、彼に止められる。

どうしたんだろう?と首を傾げると、彼がそれを口に含んだ。

行基さんも喉が渇いたのね。
そりゃあそうだ。ちょっと……いや随分激しかった。

それを思い出すだけで、ついさっきまで愛されていた体が再び火照ってきてしまう。


「ん……」


そんなことを考えていると唇がふさがれ、隙間から水がチロチロと入ってきた。


「ゴホッ」
「こぼれたじゃないか。もう一度」
「えっ、えぇぇっ……」


まさか口移しされるとは予想外も予想外。
慌てふためいていると、すぐにもう一度唇を覆われてしまった。


——ゴクン。


「今度はうまく飲めたようだな」


彼の少し濡れた唇が色っぽくて、息をするのも忘れてしまう。


「この顔、たまらない。お前はちょっと唇に触れるだけで、途端に女の顔になる」


そう、なの? そんなことを意識したことはない。
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