明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

「章子さん、大丈夫ですか？」


慌てて駆け寄ろうとした瞬間、彼女がその場にしゃがみこんでしまった。


「どうしたんだ？」
「ここのところ体調がすぐれなくて、医者に行こうかと……」


行基さんが歩み寄り尋ねると、彼女は声を震わせる。
そうだったのか。


「医者は呼んでやる。黒岩(くろいわ)、いるか？」
「はい」


行基さんが誰かを呼んだ。

すると、以前一ノ瀬さんが話をしていた男の人が、物陰からスッと現れ驚いてしまった。


「すぐに医者を呼んで来い」
「かしこまりました」


やはり、津田紡績の人のようだ。
行基さんや一ノ瀬さんの側近なのだろう。

彼はすぐに走り去る。


「あや、手伝ってくれ」
「わかりました」


章子さんを抱き上げた行基さんは、彼女の家へと運ぶ。


「押入れから布団を出してくれ」
「わかりました」


勝手に悪いと思いつつ、緊急事態なのだから仕方がない。