明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「承知しました」


私がうなずくと、彼はすぐに出ていった。



それからお医者さまがやってきた。
黒岩さんには別室で待機してもらい、私が診察に立ちあった。


「ご懐妊されていますね。まだ流れやすい時期ですから、無理は禁物ですよ。今日は貧血気味で倒れたのでしょう」


思わぬ診断に目を丸くする。
だって離縁したと聞いたばかりだったからだ。


「ありがとうございました」


お医者さまを玄関まで見送り戻ると、章子さんは目を開けていた。


「章子さん、ご懐妊だそうですよ。おめでとうございます」


もしかしたら、子ができたことを知らずに離縁してしまったのかもしれない。

残念ではあるが、子供を授かったのは喜ばしいことだと思い笑顔を作った。

すると彼女は突然起き上がり正座をして、私に頭を下げる。


「えっ、どうされたんです? まだ安静にしていないと——」
「この子は行基さんの子です」


彼女の発言に息が止まる。
そんな……。
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