明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「大事にね。それでは」


お医者さまを見送った角田さんが戻ってきて、不意に私の手を握る。


「一橋さん、赤ちゃんがいるんだって。前の旦那さんの子?」

「……そう、です。ごめんなさい。お医者さまに誤解させてしまって……」


角田さんを巻き込んでしまった。


「そんなこといいんだよ。俺、旦那さんと言われてすごくうれしくてね。おまけに子がいるなんてめでたいじゃないか」


彼は笑顔を絶やさない。
一瞬でも不安に思ったことを後悔した。


「そう、ですね。私の……子」


私と愛しい行基さんの——。


「一橋さん、俺じゃだめかな?」
「なにが、ですか?」
「俺がこの子の父親になったらだめかな?」


彼の言葉に目を瞠る。
父親に?


「まだ出会って間もないけど……奥さんと別れてずっと沈んでいたのに、一橋さんの明るさに俺は救われた。また新しい未来を築けばいいんだと思えた。一橋さんとなら一緒にやっていけると思うんだ」
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