明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
ただ、子を産んだあとしばらくは働けないかもしれない。
その前に必要なお金は貯めなくては。

大きな川にかかる橋に差しかかったとき、初子さんのことを思い出し、つげの櫛を髪に挿した。


「初子さん、見ていてね。私、ちゃんと幸せになる」


子を持つと強くなるのだろうか。

津田家を飛び出したときは、もう幸せはつかめないとむせび泣いた。
そして、初子さんにも弱音を吐いた。

でも今は違う。
私はこの子を幸せにする。そして私も。

そんなことを思いながら、行基さんにもらったあの懐中時計を無意識に握りしめていた。


津田家を出てからも、毎日ねじを巻き決して時間が途切れぬように気をつけているのは、彼との幸せな時間を忘れないようにするためだ。

あの楽しかった日々があり、今がある。
そして、新しい命も。

時間はずっとつながっている。
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