明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「恋ひ死なば 鳥ともなりて君が住む 宿の梢にねぐら定めむ」


初子さんにあの恋の和歌を教わり、本を手に取るようになってから、私もたくさんの和歌に親しんできた。
その中の一句を口にした。

——恋焦がれて死んだなら、鳥になってあなたの住む家の梢をねぐらとしましょう。


行基さんは私を鳥のようだと言ってくれた。

まあ、おしとやかにできない私を笑ったのかもしれないけれど、自由に飛び回れとも言ってくれた。

いつか、初子さんのところに行ったら、今度こそ行基さんのそばに——。


「死なせるか」
「えっ?」


その声とともにうしろからふわりと抱き寄せられ、息が止まる。


「鳥のように飛び回っても、羽を休めるのは俺の腕の中だけだと言ったはずだ。戻って来いと」


それは愛しいあの人——行基さんだった。


「どう、して……」


どうしてここにいるの?

呆気に取られて言葉が続かない。


「それは俺が聞きたい」


これは夢?

私を強く抱き寄せる彼の腕にそっと触れてみる。
すると、たしかに触れている感覚がある。
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