明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「あや。どれだけ心配したと思ってるんだ」


彼の悲痛な声が私の耳に届いた。

彼にまた『あや』と呼んでもらえただけで、胸が張り裂けそうに疼く。


「やっと見つけたと思ったら、さっき出ていったと言われて……心臓が止まるかと思った」


それじゃあ、角田さんのところに行ったの? 

まさか、探してくれているなんて。

あっ……。
やっぱり黒岩さんは偶然ではなく、私を探しに来ていたということ?


「ごめんな、さい。でも、私は……」


章子さんとはどうなっているの? 


「逃がさないよ。絶対に逃がさない」


行基さんは以前と変わらず強い気持ちをぶつけてくれる。
それがうれしくてたまらないのに、簡単には受け入れられない。

だったらどうして、私だけを見ていてくれなかったの? 
章子さんとそういう関係になったの? 
それが上流階級のたしなみ、なの?

私が欲しいのは、地位やお金じゃない。
あなたの愛だけなのに。


「貸本屋の店主とは……」


彼は弱々しい声を紡ぐ。
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