明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「ワイ、ティ」


そして、あの英字に触れて発音する。
【Y.T】はそう読むんだ。

そういえばこれがなにを示して知るのかまだ知らない。


「行基を英字で書くと頭文字はワイ。そして津田はティ」


えっ……もしかしてこれは、彼の名前?


「西洋では名前が先で、苗字があと。イニシャルというんだ」


彼はそう言うと、ふたをパチンと閉じ、私にもう一度差し出した。


「ずっと持っていてくれたんだな」


もう隠せない。
観念してこくんとうなずいた。


「あの日、袴姿のあやを見て一目惚れした。でも、それだけじゃない。言葉を交わした短い間に、突き抜けたような明るさと一本筋が通っているような信念を持つお前に、興味を持った。どうにかつながれないかととっさに持たせたのが、この懐中時計だ」


この時計にそんな思いがこもっていたとは知らなかった。
だけど、たしかに私と行基さんをつなぎ続けてくれた。
< 297 / 332 >

この作品をシェア

pagetop