明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「お前が誰かを蹴落としてまで幸せが欲しい女じゃないことくらいわかっている。現にこうして章子のために身を引こうとしたのだし」


彼は大きな手で私の頬に触れてから続ける。


「だけど初めて会ったとき、あやも同じ気持ちでいてくれたのだと思うと、ここが痛いな」


彼は自分の胸をトンと叩く。


「あのとき、無理やりにでも引きとめて捕まえておけば、こんなすれ違いもせずに済んだのに。俺の直感は正しかったのだし」


捕まえてくれても、結ばれたかどうかはわからない。
彼と私とでは、どう考えても釣り合わなかった。


「これが恋の痛みというものなんだろうね。苦しいが、悪くはない」


行基さんは私をまっすぐに見つめ、表情を緩める。


「私も、です。苦しくてたまりませんでした。でも、行基さんに恋をしたことは一度たりとも後悔したことはありません」


彼にふさわしくないのかもしれないと悩む日々ではあった。
でも、恋をしたこと自体を後悔したことはない。
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