明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
よかった。
これほどまでにこの子の命を歓迎してくれるとは。

ひとりでひっそり生み育てることを覚悟していたので、余計に喜びがこみ上げてくる。

私は彼の首に手を回し、ギュッとしがみついた。


「笑顔でよろしいかと」
「そうだな」


そう言っているくせして、彼の目がうっすらと潤んでいるのに気づいて、私まで感極まってしまう。

彼は人力車を止めると、私を膝に抱いたままそれに乗った。


「家まで我慢できるか?」
「はい」
「体が冷えてはいけない。もっとしがみついて」


彼は背広を私にかけ、強く抱きしめてくれる。


「は、恥ずかしいです」


こんな人前で……。


「俺は恥ずかしくなんてないぞ。あやは俺の自慢の妻だからね」


彼の柔らかな笑みを見ていると、ハッと思いだした。


「あっ、でも……離縁してしまって」


一番肝心なことを忘れていた。
津田家には戻れない。


「離縁なんてしてない。お前はまだ、津田あやだ。いや、一生津田あやだ」
「えっ?」
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