明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
そう、なの? 家を出たのに?


「あや。離縁というのは役所に届け出なければならないんだよ。婚姻のときもしただろう?」
「そうなんですか?」


家から出れば離縁なのだとばかり。


「はははっ、お前らしくて安心した。あや、離縁など絶対にしてやらないからな。お前がどこに逃げようと俺は追いかけていく。一生愛して愛し抜くと言わなかったか?」


たしかに、そう言われた。


「はい。おっしゃいました」


「お前はまだ覚悟が足りないようだ。世界中の人間に俺たちの仲のよさを見せつけないと」


彼はそう言うと、不意に唇を重ねる。


「ちょ、ちょっとやめてください。見られています!」
「なになに。もう一回?」
「違いま……ん」


彼は不敵な笑みを浮かべ、もう一度熱い唇を落とした。


津田家に戻ると、女中一同がうっすらと涙を浮かべ迎えてくれたのに驚いてしまった。


「あやさま、ご無事で」
「皆さん……」

「皆、お前を探すのを手伝ってくれたんだよ。あやのいない津田家は火が消えてしまったかのようだと」
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