明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
そうだったのか。

女中たちにも受け入れてもらえていたのだと、今さらながらに目頭が熱くなる。


「ありがとうございます」
「挨拶はあとだ。俺の部屋に布団を敷いてくれ。それと医者を」
「お医者さまは呼ばなくても……」


懐妊は病気ではないのよ?

私が止めたのに、彼は譲らない。


「だめだ。あやは無茶が好きだからね」


彼は私を布団に寝かせると、枕元に胡坐をかいて座る。


「あやさま、体調がお悪いのですか?」


お茶を持ってきた貞が心配そうに尋ねる。


「いや、懐妊だ」


行基さんが答えると、貞の目が大きく開いた。


「それは……おめでとうございます」
「ありがとう。これから貞たちにもたっぷりと手伝いを頼むから、よろしく」

「もちろんでございます。あやさま……お戻りくださり、ありがとうございます」


貞が目に涙をため頭を下げるのを見て、胸がいっぱいになる。


「ありがとう……」


私がお礼を言うと、貞はうれしそうに微笑み出ていった。
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