明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「女中たちは皆、お前の心配ばかりしていた。舞踊の稽古に熱心だったから、芸妓をしているのではないかと貞が言うから、そうかもしれないとまずはそこを徹底的に探して……」


そうだったのか……。


「いえ、芸妓は……。舞は好きですが、行基さんに嫌われることはしたくありません」


そんなことを口にしながら、ハッとする。

彼のもとを離れると決めていたのに、まだ嫌われたくないと心のどこかで思っていたんだわ、私。


「そうか。そうだな。あやが他の男のために舞うなんて、気分が悪い」


彼はそう言い捨てながら、私の髪を撫でる。


「だけど、小説のほうだったか」
「たくさん読めて、一石二鳥でした」
「ははは。お前はどこまでも前向きなんだな」


心配をかけておいて申し訳ないけれど、行基さんが私にくれた能力を生かせる場所にいられたのは幸せだった。


「でもなぁ、頼む。子が生まれるまではおとなしくしていてくれないか? 黒岩も相当苦労したようだし」
「黒岩さん?」
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