明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「そんな……」


それも行基さんのせいではないけれど、自分の会社で起きたことである以上、責任を感じているのだろう。

だから、章子さんに甘いのかもしれない。
お兄さんを奪ってしまったという罪悪感があるんだ。


「そして、見合いをした初子さんは、言わずもがなだな」


祝言の日の夜、『難しいな。人と人との関係は』と言っていたけれど、もしかして大切に思うと不幸が襲うということを言っていたのかもしれない。

あのとき彼は、初子さんのことを『彼女は俺と出会って不幸になった』と言っていた。


「行基さん、それはきっとたまたまです。たしかに不幸は続いたかもしれません。でも、行基さんはなにも悪くないし、それを背負う必要なんて……」


彼があの日、どんな気持ちで『愛せないかもしれない』と口にしたんだろうと思うと、胸にこみ上げてくるものかある。

『覚悟はあるか?』と私に問いつつ、自分にも言い聞かせていたのだから。
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