明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「ありがとう、あや」


彼は私の手を握り、苦しげな顔をしつつも微笑んだ。


「だから、お前への気持ちを必死に抑えようとした。夫婦として楽しくやっていきたいというのは本音だったが、それ以上は望むまいと思った。家のための婚姻だと必死に自分の気持ちを止めた」


彼は目を閉じ、スーッと息を吸い込む。
心を落ち着かせているのだろうか。


「でも、お前のおかげでこの世に踏みとどまれたとき、どうにも気持ちを抑えきれないと思った。あやが愛おしくてたまらないのだと。あやを置いて死にたくなどないと」


彼はそう言うと、私の手の甲に唇を押し付ける。


「それなら戦おうと思った。俺にまとわりつく妙な運命には負けない。絶対にあやのことは俺が守ると」

「行基さん……。大丈夫ですよ。だって一ノ瀬さんはお元気じゃないですか」


一ノ瀬さんも彼の大切な人に違いない。


「信明か……。あいつは強運の持ち主だ」
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