明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
二十八歳でそんな手腕を発揮できる人なんて、相当優秀なんだろうな。

しかも、その利益をひとりじめすることなく、きちんと還元しているなんて、なかなかできることではない。

そういえば父と母が、この街の発展は『津田さんのおかげよね』と言っていたっけ。

きっと素敵な人なんだろうな。

会ったこともない人に思いを馳せながら、もう一度整った街並みをぐるりと見渡した。



そして翌週も私たちは入れ替わった。

今日は、マガレイトではなく耳より上の髪だけを束ねリボンをつけた髪形にした。
初子さんがこのほうが似合っていると言うからだ。


「それじゃあ十七時にね」
「うん。行っていらっしゃい、初子さん」


銀の懐中時計の紳士に出会ったのは、その日のことだった。

初子さんと入れ替わっての時間が最高に楽しいと思っていたのに、彼との短い時間がそれを簡単に上回った。


「なんだろう、この気持ち……」
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