明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
家に帰り、初子さんから周防さんの話を聞いたあとも、胸の高鳴りが収まらない。


「初子さんと同じかしら?」


彼女が前のめりになって周防さんのことを私に語るように、私も本当はあの人の優しい振る舞いを初子さんに話したくてたまらない。

だけど、彼女ほどうまく話せる気がしなくて、そしてなんとなく自分だけの胸にしまっておきたくて、もらった懐中時計をじっと見つめ、彼の顔を思い浮かべた。



私と初子さんの入れ替わり生活が四カ月ほどたった頃。

父に呼び出されていた初子さんは真っ青な顔をして炊事場にいた私のところにやってきた。


「初子さん、どうかしたの? 顔色が悪いわ」
「あや、ちょっといい?」


神妙な面持ちで声を震わせる初子さんのことが心配でたまらず、すぐにうなずき彼女の部屋へと向かう。

その間も小さくなってしまった彼女の背中が気になり、嫌な予感がしていた。


「初子さん、いったいどうした——」
「縁談が決まったの」


初子さんは振り向きもせず、声を振り絞る。
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