明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「縁談!?」
「お父さまからそう言われたの。来週、その方とお会いしなくちゃいけない」
「そんな……」


初子さんが周防さんに惹かれていることは、手に取るようにわかっていた。

最近はその気持ちが加速しているように見え、約束の時間に遅れてくるようになっている。
おそらく離れがたいのだろう。


「でも、初子さんはまだ女学生よ。結婚なんて……」
「女学校は中退するのよ。そもそも女に学なんて求められていないの。いい家に嫁ぐことこそ、私の仕事」


私は衝撃を受けていた。

華族として生を受けると道が決められているというのは、結婚相手も含めてなの? 
拒否できないの?


「いい家って?」
「大きな紡績会社の副社長。跡取りなの。津田行基(ゆきもと)って名前、聞いたことない?」


あの、津田紡績の? 
街で噂を聞き、素敵な人だと思ったあの? 


「知ってるわよ、もちろん。この辺りの発展は、津田紡績のおかげだと言われてるわよね?」
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