明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

「あやさんとおっしゃるんですね。失礼ですが、どこかでお会いしたことは？」


次に行基さんは私に質問してくる。


「い、いえ……。先日お越しいただいたときに、お目にかかったのかもしれません」


本当は、人力車に乗せてもらったときのお礼を言いたかった。
でもあれは女学生姿の私だ。

本当の私は、行基さんとまともに口をきいていい身分ではない。


「そうですか……」


行基さんはなぜか肩を落とし気味につぶやく。


「初子さんに妹がいるという報告を受けましたが……」


次に放たれた津田さまの言葉に、動揺してしまう。


「い、いえっ……」


母がしどろもどろになりながら答えている。


「そうですか。このまま津田家がバカにされたままではどうにも困る。最初からその妹との縁談で、心中とは関係がないとすれば丸く収まるのではないかと考えたのですが、ガセネタでしたか」


私との、縁談？