明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「い、妹はこのあやでございます。あやは働くことが大好きで、どれだけ止めてもこうしてこうして女中のようなことをするんです。ですが、気立てのいい娘です」


父の手のひらを返したような発言に目を丸くする。


「あやは学もないんです。津田さまに失礼——」
「黙りなさい、みね」


口を挟んだ母を一喝した父は、津田家と首の皮一枚でつながったと安堵しているのかもしれない。
これで爵位は守られると。

父にしてみれば、この申し出は渡りに船だ。


「女に学問は必要ないでしょう。そのようなことは気にしませんよ」


津田さまはそう言い放ったが、行基さんが首を振る。


「父上。地位にこだわるのはもうよしてください。初子さんは私のせいで亡くなりました。あやさんにも想う方がいらっしゃるかもしれない。地位がなくても、私が会社を盛り立ててみせます」


私に想い人なんていないのに。
心が動くとしたら、行基さん、あなた——。
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