明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「私でよろしければ、そのお話お受けします」


他に好きな人がいた初子さんとは違う。

行基さんの人となりを完全に知ったわけではないけれど、この人となら恋ができるかもしれないと思ったのだ。

それに、これで孝義の将来も守ることができる。
これ以上にいい選択肢などない。


「しかし……」


行基さんは戸惑いを隠そうとせず、首を横に振る。


「あっ、申し訳ありません。私では困りますよね」


勢いで『お受けします』なんて口走ってしまったけれど、それは私の都合。

初子さんと同じように、行基さんにももしかしたら想う人がいて、それをこらえての婚約だったのかもしれない。

なにより一橋家の正統な娘として育ったわけでもない私が、こんなことを言う権利はなかった。


唇を噛みしめると、行基さんはふと真剣な眼差しで私を見つめる。


「すみませんが、あやさんとふたりで話をさせてください」


ふたりで?
行基さんの提案に仰天して、目を瞠る。
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